特定非営利活動法人「日本宇宙旅行協会」から
 
内閣官房宇宙開発戦略本部の「宇宙基本計画(案)」に対する意見
 
平成21年5月15日
 
 
1.全般
 
私は「教育」「文化」「経済」の3つを促進し、世界の未来と新しい宇宙文化を推進する「誰もが行ける一般の人の為の民間宇宙旅行事業」を推進する特定非営利活動法人「日本宇宙旅行協会」の会長をやっているパトリック・コリンズです。
宇宙基本計画(案)へのパブリックコメントを募集しているとのことで、コメントをさせていただきました。
 
今回の宇宙基本計画(案)では第2章の2項で示されている6つの方向性の中で(5)21世紀の戦略的産業の育成があるが、基本的には産業成長による経済貢献を目的にしており、その方法として衛星利用での通信や測位サービスがあげられているが、これらでは大きな成長は難しい。現在の100年に一度と言われている不況に対してこれではインパクト及び効果が弱いと思う。
 
この不況を乗り切るために宇宙産業としてイノベーションが必要で大きな成長性のある新産業の設立と成長が必要と考える。そこで、日本宇宙旅行協会はこの対策として最適なアイデアを持っている。それは「宇宙旅行産業の育成」であり、まさに「21世紀の戦略的産業の育成」にふさわしいものである。
 
また、宇宙旅行を行うためには安く宇宙に行くための輸送手段が必須であり、何度も使用できる再利用型の宇宙輸送機が必要になる。これは、第3章で示された9つのシステム・プログラムのうちH項の宇宙太陽光発電研究プログラムを実現するためにも必須となる共通の目標ともなる。(宇宙太陽光発電システムは莫大な量の物資を宇宙に運ぶ必要があり、安い輸送手段は必須である。)
 
 
2.宇宙旅行産業の育成の提案
 
日本経済の百年ぶりのこの良くない現状は「新産業不足不況」だと言えば分かりやすい。新産業不足の対策は、新産業の設立と成長しかない。
「どの新産業がいい?」かと言うと、雇用を増やす産業、利潤を得る産業、長期的に成長する産業、すなわち大勢が買いたいサービスを供給する産業がいい。
 
1993年、日本で世界初めての宇宙旅行についての市場調査を行った。安全で安くなれば、日本人の過半数は宇宙旅行をしたいと分かった。
その後、他の国での同じ調査からも同様な結果が出てきた。
宇宙旅行の実現にあたっては、かつて60年前に日本では「秋水号」ロケット・プレーンを造った実績があり、弾道飛行型宇宙旅行は実現しやすい。
 
宇宙旅行とは宇宙局のプロジェクトのやり方と異なって、基本的には航空宇宙産業の仕事であり、既に、他国の航空宇宙産業は宇宙旅行サービスを実現するように努力している。最初のサービスは宇宙までの弾道飛行で技術の面で難しくないので、費用もリスクも少なくて済む。米国の航空局のF.A.A.は安全基準やスペースポートの規制や健康診断などのガイドラインを既に全部定めている。(これは宇宙局のNASAと関係ない)。
 
欧米で複数の企業で宇宙旅客機は既に開発中で、米国の複数の州政府は弾道飛行用スペースポートを支持している。(カリフォルニア、ニューメキシコ、オークラホマ、フロリダ、バージニア、等)。欧州でも複数の国でスペースポートは設計中である( スエーデン、フランス、イギリス、スペイン、イタリア、等)。EUも法律を検討している。
 
新産業の宇宙旅行は、航空産業のように、以下の多くのビジネス・チャンスと雇用を生み出すことができる。
1)製造: 輸送機メーカ、部品メーカ(材料、構造、エンジン、通信システム、レーダー、窓、車輪、ブレーキ、ポンプ、タイヤー、座席、ビデオ・システム、トイレ)等。
2)運航: 燃料、メンテナンス、掃除、乗務員、食事、征服、保険、金融、旅行会社、等。
3)スペースポート: 建設、設備、経営、航空宇宙交通管理、ガードマン、ショッピング・センター、運輸、等。
4)観光: 観光地、ツアー、ホテル、レストラン、グッズ、お土産、服、等。
 
航空産業のように、利潤を得る消費者のサービスになるので、公共工事より雇用、経済、環境、教育に大いに貢献する。
環境の面では、ロケット燃料は液体水素にすれば、弾道飛行サービスでの空気汚染はない。
宇宙旅行は若者に大人気なので教育の再生、特に「理科離れ問題」の対策や「創造性に富んだ科学技術人材の教育」に大いに貢献する。
経済の面で、宇宙旅行は輸出より内需拡大する産業なので、日本に特にのぞましいと考えられる。
 
エンジニアの計算によると、弾道飛行の乗客の人数が年に百万人になったら、一人50万円まで安くすることができる。
この安い値段になったら、世界中の乗客は毎年何百万人まで増えると思われている。
毎年百億円を投資すれば、3年後までに日本製プロトタイプも飛ぶことになる。
10年後までに、日本での宇宙旅行サービスの収入は年に五千億円にもなるだろう。
 
弾道飛行サービスが始まったら、次の段階の軌道まで宇宙旅行サービスも開発される。
必要な投資が十倍増えるが売上高と雇用は何十倍増える。
軌道までの旅行が一人200万円になったら、売上高は現在の航空産業に相当して、年に百兆円まで成長する。
軌道まで行く費用はこれで安くなったら、宇宙で生まれるビジネス・チャンスも無限になる。
 
一つの重要な可能性として宇宙用太陽電池と無線送電を使うなら、日本でもエネルギー輸出国になることができるだろう。
又、宇宙資源を使うことになったら、地上の資源不足がなくなって、「資源戦争」が終わるので、世界平和と地球環境問題を根本的に直せる。
 
1998年に経団連は「宇宙旅行は、宇宙活動の商業化に対する強い動機づけになることが期待されています」と述べた。しかし、今まで参加するようにしていない。
逆に、近年中国とインドは宇宙開発に力を入れている間、日本の宇宙活動は減ってきている。
もし中国とインドが日本より早く宇宙旅行サービスを実現すれば、日本のメーカは競争することができなくなる。
日本がこの魅力的な新産業をリードするチャンスはどんどん無くなっている。
 
日本のメーカが欧米のように宇宙旅行ブームに参加するように、航空宇宙産業が年に百億円の予算を使えば:
   * 短期的に、教育と若者に魅力的。
   * 中期的に、弾道飛行サービスブームは行う。
   * 長期的に、軌道上宇宙旅行は21世紀の最高の新産業になる。
その上、若い世代に唯一の明るい将来のビジョンを教える。
 
1960年代の米国に、アポロ・プロジェクトは「物理学ブーム」を生んだ。
同じように、弾道飛行宇宙旅行プロジェクトは「創造性に富んだ科学技術人材の教育ブーム」になれる。
 
是非、この若い日本人に魅力的な新産業を、早く始めよう!
 
 
3.連絡先
 
特定非営利活動法人「日本宇宙旅行協会」
住所:
〒105−0013
東京都 港区 浜松町 1ー20ー2
ファックス: 03ー5404−7802
www.spacetravel-japan.org
 
 
パトリック・コリンズ会長